日本でブレジャーは浸透するだろうか

ブレジャーという制度をご存じですか?

ビジネス(Business)とレジャー(Leisure)を組み合わせた新しい出張の形「ブレジャー(Bleisure)」をみなさんはご存知でしょうか。出張の前後で休暇を取得し、出張先で個人旅行を楽しむというスタイルです。日本ではあまりなじみのない言葉ですが、欧米諸国では数年前から取り入れられています。出張に係る費用は会社負担となり、個人での負担は純粋に個人旅行として使用した追加の交通費と宿泊費になります。憂鬱であった出張がブレジャーによりリフレッシュする機会も加味され、仕事へのモチベーション向上、パフォーマンスの向上につながる期待効果があります。また、2019年4月から年間5日以上の有給休暇の取得が義務付けられていますが、ブレジャー制度の導入により有給休暇取得促進につなげることも可能です。

 

欧米では流行っていますが、日本での現状はどうでしょう

日本でのブレジャーの認知度はまだまだ低いのが現状ですが、欧米諸国ではすでに多くの人々が利用したことがあり、メジャーなものとなりつつあります。出張規定にも記載されており、一例として、出張に家族を同伴して良いという企業があったり、2週間の長い休暇を取得して家族と一緒に楽しむこともあります。

日本では長らく有給休暇取得率が低く、長期休暇の取得も低い傾向にあります。長期休暇が取得できないと旅行に行くことは難しいのですが、そこでブレジャーが浸透してくれば、より休暇も取りやすく、また旅行にも行きやすくなるのではないでしょうか。

直近では、訪日外国客を誘致する目的で2020年1月にブレジャーを議題とした有識者会議が開かれました。日本企業の海外支社で働く人々の日本出張時に家族と一緒に来日してもらい、日本の観光地を訪れてもらおうという政府の取り組みです。訪日外国客へのブレジャーがさらに浸透してくれば、日本でのブレジャーへの関心が一気に高まるでしょう。

出張費は会社負担のためコスト重視と見られる傾向が長らくありましたが、働き方改革が唱えられている今、ブレジャーのような制度が整っている会社が、働きやすい会社として評価されていくのではないでしょうか。

 

ブレジャー導入で大切なことは

では、なぜブレジャーは日本で浸透していないのでしょうか。
ブレジャーを導入するためには、明確にしておかなければならないルールが数多くあることが大きな要因となっています。

まず、労災認定を複雑にしないために出張とレジャーの時間をきっちりと分ける必要があります。
費用面に関しては、通常の出張より高くなる場合は個人負担となりますが、差額の算出方法を決めておかなければなりません。家族同伴を許可した場合、手配方法や精算方法も決めなければなりません。
また会社には「安全配慮義務」があります。出張者が出張中に安全で快適に過ごせるように危機管理計画を実施するという企業の責任があります。そのため「危険なアクティビティに参加させない」などある程度制限をかけたり、旅行先と日程を会社へ報告して、万が一の事故に社員が巻き込まれた際には迅速に対応できるよう準備をしておく必要があります。

元々出張は管理方法によって不正が発生しやすい特徴があるので、ブレジャー導入前には取り決めをしっかりと作ることが重要です。今後、ブレジャーがますます日本で叫ばれるようになった時、企業として決めなければならないことはたくさんあります。

 


トラベルコンサルティング事業部
コンサルタント
新木 春香